経営理念
"オモシロイ"という言葉を、私たちはあえてカタカナで書きます。「面白い」と書くと、お笑いやコメディの匂いが強くなりすぎるからです。私たちが言うオモシロイは、もっと根っこにある感情です。「やってみたい」が口から出てしまう瞬間。「明日が早く来てほしい」と思える夜。誰かの挑戦を見て「俺もやろう」と腰が浮く感覚。人を動かすプラスのエネルギー全部を、ひとことでオモシロイと呼んでいます。
子どもの頃を思い出してみてください。誰に頼まれたわけでもないのに、虫を追いかけ、絵を描き、秘密基地を作り、気づくと日が暮れていた。あの夢中の時間に、私たちの脳はもっとも気持ちよく働いていました。ケンブリッジ大学のヴォルフラム・シュルツ教授が1998年に発表した研究では、ドーパミンは「快感そのもの」ではなく「予測できない新しい刺激」に反応して放出されることが分かっています。つまり脳は、知っていることをこなす時より、見たことのないものに出会う時に最大限ドライブするように設計されています。「今ここにない」を作る、というのはこの脳の設計に正面から応えることです。
ところが大人になると、その時間は静かに消えていきます。総務省の社会生活基本調査(2021年)によれば、日本の有業者が1日に学習・自己啓発に使う平均時間は、わずか13分。趣味・娯楽を含めても1日の自由時間の多くは受け身の消費で埋まります。米Gallupの2024年調査では、自分の仕事に夢中だと答えた日本人は6%。140カ国中、最低水準です。便利な時代に生まれた私たちは、その時代を楽しみきれていません。
「今ここにある」ものはAIが作れる時代になりました。検索すれば出てくるもの、平均値の組み合わせで作れるもの、誰かが先に答えを置いてくれているもの。ここで戦っても、もう差はつきません。差がつくのは、まだ世に出ていないオモシロイを、どれだけ手元から生み出せるかです。札幌で挑戦している経営者の物語、触っていて思わず笑ってしまう業務システム、開いた瞬間に「この会社で働きたい」と思わせる採用サイト。私たちが作っているのは、全部この「まだ世にないオモシロイ」です。
X-Forceがマーケティング・システム・Web・メディアの4事業を持っている理由も、ここにあります。1つの形式だけでは、世の中に新しいオモシロイを十分に届けられないからです。売上の角度、業務の角度、顔と価値観の角度、物語の角度。4つの角度から「今ここにないもの」を作り続ける。それが私たちの存在理由です。
「人生」と「エンタメ」を並べると、最初は違和感を持つ方もいると思います。人生はもっと真面目で、重くて、頑張るものだ、と教わってきたからです。私たちは、その前提そのものを置き直したいと思っています。人生は、消費する時間ではなく、自分自身で演じ、味わい、巻き込んでいく体験そのものです。仕事も暮らしも挑戦も、全部その体験の中身です。
商品の性能を語る時代から、その商品と人の関係そのものを再定義する時代へ。世界はずっと、この転換を繰り返してきました。私たちは同じことを、「人生」というカテゴリでやりたいと思っています。我慢する人生・処理する人生・誰かに正解を聞く人生から、自分で選び、夢中になり、面白がる人生へ。それが「最大のエンタメにする」という言葉の射程です。
この再定義が必要な理由は、日本の現実が示しています。厚生労働省の患者調査によれば、精神疾患により医療機関にかかっている総患者数は、2002年の258万人から2020年には614.8万人に増えました。約20年で2.4倍です。自殺者数は2023年で21,837人(警察庁・厚労省)、10代から30代の死因の1位は10年以上「自殺」のまま動きません。便利になればなるほど、心が軽くなっていない人が増えている、というのが今の社会の素顔です。
働く現場の数字も同じ向きを指しています。米Gallup「State of the Global Workplace 2024」で、自分の仕事に夢中(エンゲージしている)と答えた日本人はわずか6%。調査対象140カ国の中で最低水準でした。中小企業庁の調査でも、経営者の3〜4割が強いストレスや孤独感を抱えていると答えています。会社の数字を背負って毎日意思決定している人ですら、自分の人生を楽しみきれていないということです。
シカゴ大学のミハイ・チクセントミハイ教授は、人がもっとも満たされる状態を「フロー」と呼びました。明確な目標があり、適度に難しく、時間を忘れて没頭できる状態です。彼の研究では、フローを多く体験している人ほど、幸福感・創造性・人生満足度が高いことが繰り返し示されています。お金や肩書きではなく、夢中の総量が人生の質を決める、というのが心理学のほぼ一致した結論です。
「最大のエンタメにする」というのは、人を笑わせるという意味ではありません。フロー、夢中、挑戦、好奇心、人とのつながり、自分で選んだという感覚。これら全部を含んだ、夢中の総量を最大化する、という意味です。事業を伸ばす数字も、業務を楽にする仕組みも、世に届ける物語も、私たちは全部この一行のために使っています。X-Forceは、人生というカテゴリの意味を、ここから書き換えていく会社です。